LEWD BEAST TRIBE

SERIAL RECORD

ミトス/マーテル《世界を憎んだ少年に「続きを」》

『テイルズ オブ シンフォニア』ミトス/マーテル

世界を憎んだ少年に「続きを」

――もし、彼らが永夜世界ノクティラの思想と出会ったなら

はじめに

もし、

世界を憎むだけの理由があったのなら。

その憎しみを捨てなければ、幸福にはなれないのだろうか。

差別された。

拒絶された。

大切な人を失った。

世界の理不尽を知った。

そして、

そんな世界そのものを変えようとした。

ミトスという人物について考えるとき、

「憎しみを捨てれば救われる」

という結論にはしたくない。

なぜなら、

彼が世界を憎んだことには、

彼自身が生きてきた歴史があるからだ。

それを、

「もう忘れよう」

の一言で取り除いてしまえば、

彼自身の人生まで否定することになる。

では。

憎しみを残したままでも、

その先へ進むことはできるのだろうか。

そして、

彼にとってあまりにも大きな存在であったマーテルもまた、

誰かの理想や世界のためではなく、

一人のマーテルとして生きることができたなら。

二人の物語には、

どんな「続き」が生まれるのだろう。

1.ミトスは、世界を憎んだ

ミトスの幸福を考えるうえで、

この部分を曖昧にしてはいけない。

世界を憎んだ。

そこには理由がある。

差別があった。

争いがあった。

喪失があった。

世界そのものへ失望するだけの経験があった。

だからノクティラは、

彼へ最初から、

「世界を信じてみよう」

とは言わない。

まして、

「本当は世界を愛しているんでしょう」

とも言わない。

憎んだのなら、憎んだままでいい。

まずはそこから始める。

2.憎しみは、突然生まれたものではない

人は、

何の理由もなく世界すべてを憎むことは少ない。

信じた。

期待した。

大切にしたかった。

それなのに、

傷ついた。

だから期待しなくなった。

信じなくなった。

そして、

もう二度と同じように傷つかないために、

世界の側を拒絶する。

もしそうであるなら、

憎しみだけを取り除こうとすることは、

その前にあった痛みを見ないことでもある。

ノクティラが見るのは、

「世界を憎んでいるミトス」だけではない。

「どうして世界を憎むところまで来たのか」という、そこへ至るまでの時間である。

3.ノクティラは、彼に「信じろ」と要求しない

もしミトスがノクティラへ来たとして。

おそらく、

すぐには何も信用しないだろう。

ここでは差別されない。

そう説明されても、

簡単には信じない。

そんな社会があるはずがない。

今だけだ。

何か裏がある。

そう考えても不思議ではない。

だから、

無理に信じさせる必要はない。

信じられない者へ信頼を要求することも、一つの強制になり得るからだ。

4.「僕たちはハーフエルフだ」

自分たちがハーフエルフであることを伝える。

相手は答える。

「そうなんだ。」

それだけ。

ミトスは、おそらく警戒する。

反応が薄すぎる。

何かある。

あとから態度が変わるのではないか。

けれど、

次の日も変わらない。

その次の日も。

店へ行けば普通に客として扱われる。

何かを頼まれる。

意見が違えば反論もされる。

嫌なことをすれば怒られる。

けれど、

「ハーフエルフだから」という理由では何も変わらない。

5.特別に愛されるのではなく、特別に拒絶されない

ここは、とても重要だと思う。

ノクティラは、

傷ついてきたミトスを、

永遠に「可哀想な存在」として扱う場所ではない。

ハーフエルフだから優しくする。

ハーフエルフだから特別扱いする。

それもまた、

属性によって相手への態度を変えていることには違いない。

必要な配慮はする。

過去を知っていれば、

傷つきやすい部分には気をつける。

でも、

それだけ。

特別に受け入れられるのではなく、特別に拒絶されない。

ただ一人のミトスとして扱われる。

6.一年経っても、変わらない

最初の一回なら、

演技だと思える。

一ヶ月なら、

まだ疑える。

一年経った。

それでも何も変わらない。

十年経った。

それでも、

ハーフエルフであることを理由に誰かが態度を変えるわけではない。

何かを頼まれる。

「これ、持ってくれない?」

「僕はハーフエルフだよ。」

「知ってるけど?」

そこで会話が終わる。

持ちたければ持つ。

嫌なら断る。

ただそれだけ。

そういう日が、

何年も続く。

7.信頼を取り戻すのに、百年かかってもいい

それでもミトスは、

疑い続けるかもしれない。

十年では足りない。

百年必要かもしれない。

それでいい。

ノクティラには、

「そろそろ信じてくれてもいいでしょう」

と要求する理由がない。

信頼は、

親切への対価ではない。

受け入れてやったのだから信用しろ、

というものでもない。

幸福になる速度まで、本人のものだからだ。

8.疑いながら暮らしてもいい

疑っている。

でも飯は食う。

警戒している。

でも町へ出る。

信用していない。

でも頼まれた仕事を手伝う。

誰かと話す。

喧嘩もする。

また次の日になる。

完全に安心できなくても、

生活は始められる。

そして、

生活を続けた結果として、

いつか本人自身が、

「ここなら少しくらい信じてもいいかもしれない」

と思う。

その順番でいい。

9.そして、そこにはマーテルがいる

けれど。

ミトスについて考えるなら、

やはりマーテルの存在は大きい。

会いたかった。

失いたくなかった。

一緒にいたかった。

その願いを、

ノクティラでは複雑な理屈へ変える必要はない。

「会いたかったから。」

それだけでいい。

大切な人に会いたい。

一緒に生きたい。

そんな願いに、

世界を救うほどの理由など必要ない。

10.ただし、マーテルは「ミトスを救うための存在」ではない

ここで、

一つ大切にしたいことがある。

マーテルが存在すれば、

ミトスは救われる。

だから、

ミトスのためにマーテルがいる。

そういう構造にはしたくない。

それでは、

マーテル自身がまた、

誰かのための存在になってしまう。

ノクティラにいるマーテルは、

一人のマーテルである。

ミトスの姉である前に、

一つの人生を持つ存在だ。

11.マーテル自身の人生

何を食べたいのか。

どこへ行きたいのか。

誰と話したいのか。

何を学びたいのか。

どんな場所が好きなのか。

今日は一人でいたいのか。

誰かと出かけたいのか。

そういうことを、

マーテル自身が決めていい。

世界のためではない。

使命のためでもない。

ミトスのためだけでもない。

マーテル自身が幸福になるための人生がある。

12.それは、ミトスにとっても必要なこと

一見すると、

「ずっと一緒にいたかったミトス」にとって、

マーテルが自分とは別の人生を持つことは、

寂しいことにも見える。

けれど、

だからこそ意味がある。

大切だから閉じ込める。

失いたくないから離さない。

そうするのではなく、

マーテル自身に選択する自由がある。

そのうえで、

彼女がミトスのところへ帰ってくる。

それなら、

「一緒にいる」という関係の意味が変わる。

13.「失わない」から「一緒にいたい」へ

失うことを恐れると、

大切な存在は、

「絶対に失ってはいけないもの」

になる。

けれど、

大切にすることと、

所有することは違う。

マーテルには、

マーテルの人生がある。

ミトスには、

ミトスの人生がある。

その二つが、

本人たちの意思によって交わる。

「失いたくないから一緒にいる」のではなく、「一緒にいたいから一緒にいる」。

そこには、

まったく別の安心がある。

14.マーテルが外へ出ていく日

マーテルが、

一人でどこかへ出かける日もあるだろう。

誰かと話す。

何かを見に行く。

自分の興味を追いかける。

ミトスは、

最初は不安かもしれない。

戻ってこないのではないか。

また失うのではないか。

そんな恐怖が消えないこともある。

それでも、

夜になる。

そして、

マーテルが帰ってくる。

15.「おかえり」が積み重なる

一度帰ってくる。

次の日も。

その次の日も。

別の場所へ行って、

また帰ってくる。

失わないために閉じ込めなくても、

相手は帰ってくることがある。

それを、

時間をかけて知っていく。

「帰ってくる」は、「離れない」よりも自由な繋がりである。

ノクティラがミトスへ与えられる安心の一つは、

そこにあるのかもしれない。

16.それでも、過去は消えない

マーテルがいる。

差別されない。

生活もできる。

だから、

過去は全部解決した。

そうはならない。

ミトスが行ったことは残る。

傷ついた者もいる。

奪われたものもある。

世界を憎んだ結果、

彼自身が他者へ行ったこともある。

それは、

幸福になったから消えるものではない。

17.「僕が何をしたか、知っているだろう」

幸福な時間が増えるほど、

過去を思い出すこともあるかもしれない。

自分だけが、

こんな生活をしていていいのか。

自分には、

こんな未来を持つ資格があるのか。

そんな問いを、

ミトス自身が抱えることもあるだろう。

そこで、

ノクティラは、

「もういいんだよ」

と勝手に終わらせない。

18.「知っているわ」

マーテルも、

知らないふりをする必要はない。

知っている。

何があったのか。

何をしたのか。

どうしてそこへ至ったのか。

だから、

過去について話す。

悲しかったこと。

怒っていること。

間違っていたと思うこと。

理解できること。

それでも認められないこと。

全部。

そして、

その話が終わったなら。

19.「では、これからのお話をしましょう」

この言葉は、

ミトスとマーテルについて考えたとき、

とてもノクティラらしい答えだと思う。

「では、これからのお話をしましょう。」

過去を忘れよう、

ではない。

もう終わったことだから、

でもない。

赦されたから、

でもない。

過去について話した。

なら、

未来についても話そう。

それだけだ。

20.明日の話をする

明日は何を食べる?

どこへ行く?

誰に会う?

何をしたい?

そんな小さな話でいい。

来年の話でもいい。

十年後でも。

百年後でも。

ミトスが、

「自分には未来などない」

と思っているなら、

最初は明日の話だけでいい。

未来とは、壮大な計画ではなく、明日の予定から始められる。

21.世界を憎んだ理由を、忘れなくていい

ミトスは、

ノクティラで長く暮らしても、

世界の理不尽に敏感なままだろう。

差別を見れば怒る。

誰かが属性だけで扱いを変えられているのを見れば、

黙っていられないかもしれない。

それでいい。

その怒りは、

彼自身が生きてきた歴史から生まれたものだからだ。

幸福になるために、

その感覚まで鈍らせる必要はない。

22.怒りに、別の出口を作る

変えるのは、

怒ることではない。

その怒りを何に使うかだ。

世界を壊す。

他者の選択を奪う。

自分の理想へすべてを従わせる。

それだけが、

怒りの使い道ではない。

「これはおかしい。」

そう言う。

誰かと話す。

仕組みを変える。

新しい場所を作る。

同じことが起こらない方法を考える。

世界への怒りを、世界を良くするための力へ使うこともできる。

23.世界を愛さなくても、世界を良くしたいと思える

ここには、

少し不思議な感情がある。

世界の全部を好きではない。

嫌いなものもある。

許せないものもある。

それでも、

「もう少し良くなればいい」

と思う。

これは、

世界への全面的な愛ではない。

けれど、

世界を完全に諦めた者には持てない願いでもある。

「良くなってほしい」と願うことは、まだ世界に何かを期待しているということだからだ。

24.《世界への憎悪》から

ミトスについて、

ノクティラで考えた幸福の形は、

**《世界への憎悪》
→《世界を良くしたいという願いへの回帰》**

である。

憎しみが消えて、

優しい少年になる。

そういう話ではない。

世界の理不尽へ怒る。

それは残る。

けれど、

その怒りを、

「全部壊してしまいたい」

ではなく、

「だったら、もう少しマシにしたい」

へ使えるようになる。

25.それは、新しい願いではない

そして、

この願いは、

ノクティラがミトスへ植えつけた新しい思想ではないのかもしれない。

もっと昔。

世界を憎みきるより前。

彼自身の中に、

すでにあったもの。

理不尽な世界を、

少しでも変えたい。

誰かが属性によって傷つけられる世界を、

そのままにはしたくない。

だからこれは、

別人になることではない。

途中で見失ってしまった自分自身の続きを、もう一度拾い直すことなのだと思う。

26.昔と同じミトスには戻らない

ただし、

昔へ戻るわけではない。

何も知らなかった頃には戻れない。

傷つく前にも。

失う前にも。

世界を憎む前にも戻れない。

でも、

戻る必要もない。

過去を経験した今のミトスだからこそ、

昔とは違う方法を選べる。

誰か一人が、

世界すべての答えを決めることの危うさも知っている。

理想のために他者の自由を奪えば、

何が起きるのかも知っている。

その経験まで持って、

もう一度始めればいい。

27.「世界を良くする」を一人で背負わない

ミトス一人が、

世界を救わなくてもいい。

完璧な世界を完成させなくてもいい。

差別をなくしたい者がいる。

争いを減らしたい者がいる。

新しい制度を考える者がいる。

文化を作る者がいる。

ただ生活する者がいる。

それぞれが、

自分の人生を生きている。

その中へ、

ミトスも参加すればいい。

世界を良くしたいという願いを持つことと、世界のすべてを自分で背負うことは違う。

28.意見が違う者がいていい

ミトスが何かを提案する。

誰かが反対する。

「その方法は嫌だ。」

と言う。

昔なら、

それは理解されないことへの苛立ちになるかもしれない。

けれど、

ノクティラでは、

相手にも自分と同じだけ選択する権利がある。

だから話す。

譲れるところは譲る。

譲れないところは説明する。

それでも一致しないなら、

別の方法を探す。

他者と共に世界を作るとは、他者が自分と違う答えを持つことまで受け入れることでもある。

29.マーテルも、反対していい

これは、

二人の関係でも同じだ。

マーテルが、

ミトスの考えに反対することもある。

姉だから、

弟を無条件に肯定する必要はない。

「私はそうは思わないわ。」

と言っていい。

ミトスも、

腹を立てるかもしれない。

言い返すかもしれない。

でも、

それで関係が終わるわけではない。

意見が違っても、

次の日にまた話せる。

30.「嫌われた」と「意見が違う」は同じではない

拒絶されてきた経験があると、

意見を否定されることと、

自分自身を否定されることが、

同じに感じられることがある。

けれど、

本当は違う。

「その考えには賛成できない。」

と、

「あなたには存在する価値がない。」

は、

まったく違う言葉だ。

ノクティラで長い時間を生きる中で、

ミトスはその違いも少しずつ知っていくかもしれない。

否定される意見があっても、否定されない存在でいられる。

31.喧嘩しても、翌日がある

マーテルと喧嘩する。

誰かと意見がぶつかる。

腹が立つ。

今日はもう話したくない。

それでも、

次の日がある。

翌朝になって、

まだ少し気まずい。

それでも食事をする。

必要なら話す。

仲直りすることもある。

まだ納得できないこともある。

でも、

関係そのものを消さなくてもいい。

一度の衝突が、すべての終わりにならない。

これもまた、

「続きを作れる」ということだ。

32.失ったあとにも、新しい記憶は増える

ミトスにとって、

マーテルとの過去は大きい。

だからこそ、

その記憶だけで二人の関係を完成させない。

新しい場所へ行く。

新しい食べ物を食べる。

知らない文化を見る。

くだらないことで笑う。

喧嘩する。

仲直りする。

何十年。

何百年。

新しい記憶が増えていく。

やがて、

二人の関係は、

「失う前の記憶」だけでは語れなくなる。

33.過去より、未来のほうが長くなる

もし十分な時間があるなら。

いつか、

ノクティラで過ごした時間のほうが、

過去より長くなる日が来る。

過去は消えていない。

でも、

それ以外の記憶が増えた。

差別されなかった日。

普通に扱われた日。

マーテルが出かけて、

ちゃんと帰ってきた日。

誰かと喧嘩した日。

また話した日。

何も特別なことがなかった日。

過去を小さくするのではなく、未来を大きくしていく。

34.「忘れる」のではなく、「それだけではなくなる」

これは、

ノクティラが過去を扱うときに大切な考え方だと思う。

辛かったことを忘れなくてもいい。

忘れられないなら、

それでいい。

でも、

人生がその記憶だけで埋め尽くされている必要はない。

新しい記憶を増やす。

好きなものを増やす。

大切な人との時間を増やす。

行きたい場所を増やす。

そうして、

「あの出来事があった人生」から、「あの出来事もあった人生」へ変えていく。

35.ミトス自身の人生も始まる

世界を変えるためでもない。

マーテルを失わないためでもない。

誰かに認められるためでもない。

ミトス自身が、

何をしたいのか。

何が好きなのか。

どこへ行きたいのか。

どんな時間を楽しいと思うのか。

それを探していい。

もしかすると、

最初は何も分からないかもしれない。

それでもいい。

時間はある。

36.世界を救わない日のミトス

今日は、

世界を変えなかった。

差別について議論もしなかった。

誰かを救ったわけでもない。

ただ、

マーテルと食事をした。

町を歩いた。

何かを買った。

少し言い争った。

帰ってきた。

それだけ。

けれど、

その一日も、

ミトスの人生である。

世界を救おうとしていない時間にも、彼自身の価値は残っている。

37.マーテルも、「聖なる誰か」ではなくていい

そしてマーテルもまた、

常に正しい人でなくていい。

疲れる日がある。

機嫌の悪い日もある。

何もしたくない日もある。

間違えることもある。

弟に腹を立てることもある。

自分のためだけに何かをしたい日もある。

それでいい。

誰かにとって大切な存在であることと、完璧な存在であることは違う。

38.姉と弟でありながら、それだけではない

ミトスにはミトスの友人ができる。

マーテルにはマーテルの友人ができる。

別々の場所へ行く。

別々の経験をする。

そして、

帰ってきたら話す。

姉弟だから一緒にいる。

それだけではなく、

別々の人生を持ちながら、

それでも互いを大切にする。

その関係は、

昔より少し自由になる。

39.《世界への憎悪》→《世界を良くしたいという願いへの回帰》

ミトスの幸福を、

ノクティラの思考実験として整理するなら、

この形になる。

**《世界への憎悪》
→《世界を良くしたいという願いへの回帰》**

世界を好きになる必要はない。

怒りを捨てる必要もない。

過去を忘れる必要もない。

ただ、

「こんな世界は嫌だ」

という感情を、

「だったら、どんな世界なら少し好きになれるだろう」

という問いへ変えていく。

その答えを、

一人で決めなくてもいい。

40.《失いたくない》→《一緒に生きたい》

そして、

マーテルとの関係についても、

もう一つの変化がある。

**《失いたくない》
→《一緒に生きたい》**

似ているようで、

これは大きく違う。

失いたくないから、

相手を留めるのではない。

相手には、

どこへでも行ける自由がある。

自分にもある。

それでも、

今日も一緒にいたい。

明日も会いたい。

その意思によって、

二人の関係を作り直していく。

41.《過去に戻りたい》→《続きを作りたい》

そして、

この二人について最も大きな変化を一つ挙げるなら。

**《過去に戻りたい》
→《続きを作りたい》**

なのだと思う。

戻れない。

過去は変えられない。

失った時間もある。

間違えたこともある。

でも、

その先はまだ決まっていない。

だから、

戻るのではなく、

続ける。

42.「これからのお話をしましょう」

過去について話した夜。

長い話になるかもしれない。

何度も同じ話をするかもしれない。

答えが出ないこともある。

それでいい。

話が終わったら、

次の話をする。

明日の話。

来年の話。

百年後の話。

行きたい場所。

やってみたいこと。

会ってみたい人。

「では、これからのお話をしましょう。」

その言葉を言える限り、

物語はまだ終わっていない。

おわりに

世界を憎んだ少年に、「続きを」

ミトスを幸福にするために、

世界を憎んだ過去を消す必要はない。

差別されたことを忘れさせる必要もない。

怒りを捨てさせる必要もない。

「本当は優しい少年だった」

という部分だけを、

本当の彼として取り出す必要もない。

世界を憎んだミトスも、

ミトスである。

間違えたミトスも。

怒ったミトスも。

大切な人を失いたくなかったミトスも。

全部、

彼が生きてきた時間の中にいる。

だから、

昔へ戻すのではない。

その全部を連れて、

先へ進む。

そしてマーテルも、

ミトスを救うためだけの存在にはしない。

一人のマーテルとして、

自分の人生を生きる。

行きたいところへ行く。

誰かと出会う。

自分で選ぶ。

そのうえで、

ミトスのところへ帰りたいと思えば帰る。

ミトスも、

それを待てるようになる。

やがて、

二人には新しい記憶が増えていく。

失った記憶だけではない。

帰ってきた記憶。

笑った記憶。

喧嘩した記憶。

仲直りした記憶。

差別されなかった記憶。

何も起きなかった記憶。

そして、

明日の予定を話した記憶。

過去は消えない。

ただ、

過去よりも未来のほうを、大きくしていくことはできる。

世界を憎んだ少年が、

世界を愛する少年へ戻る必要はない。

世界を憎んだことを知っているからこそ、

理不尽を見れば怒れる。

差別を見れば、

「それはおかしい」

と言える。

そして今度は、

世界を壊すのではなく、

誰かと一緒に、

少しだけ良くしていくことができる。

マーテルも、

その隣にいなければならないわけではない。

ただ、

一緒にいたいなら一緒にいる。

それでいい。

いつかミトスが、

過去について話し終えたあと。

マーテルが、

静かに次の話を始める。

「では、これからのお話をしましょう。」

明日は何をする?

来年はどこへ行く?

これから、

どんな世界を見たい?

その問いに、

ミトス自身が答えられるようになるまで。

何年かかってもいい。

何百年かかってもいい。

未来は、

彼から逃げない。

救いとは、過去を消すことではない。

過去のあとにも、自分の物語を書き続けられることなのかもしれない。

世界を憎んだ少年にも。

大切な者を失った者にも。

間違えてしまった者にも。

まだ、

続きを作ることができる。

あなたが、生きてきたことを否定しない世界。

永夜世界ノクティラ。

本記事について

本記事は『テイルズ オブ シンフォニア』に登場するミトスおよびマーテルの人物像・価値観・作中で描かれたモチーフを題材として、Lewd Beast Tribe/永夜世界ノクティラの文化・倫理・思想を考察する非公式の比較研究・思考実験です。

本記事で記述している「ノクティラであればどうなるか」という内容は、すべてLewd Beast Tribe側から行った独自の仮定であり、『テイルズ オブ シンフォニア』の公式設定・続編・公式解釈を示すものではありません。

『テイルズ オブ シンフォニア』および同作に登場するキャラクター・設定等の権利は、それぞれの原作者・出版社・制作会社その他の権利者に帰属します。

Lewd Beast Tribeおよび本サイトは、『テイルズ オブ シンフォニア』ならびに各権利者とは関係ありません。